今日こそは許さないと決めていたはずだった。

午前二時の雨は止まない。
ぼつぼつと絶え間無く打ち付ける雨の粒以外の音がない。
可愛い服を着た私は助手席に靴を脱いで体育座りをしていて、仁王くんは缶コーヒーを啜った。
CDはとうの昔に最終トラックを再生した。
申し訳程度の街灯も雨で白んで、小さなアパートの小さな駐車場すら照らせていない。
霞んだ光が流れる土砂降りの影を2人の白い肌と、私の足元の包丁に落としている。
車のシートの匂いと私の苺のラストノート、嫌いな人と同じ香りの柔軟剤を染み込ませたトレーナー。
もう一生この場所でうずくまっていたっていい。
ここだけが世界の中でただ一つ安全だった。
ここだけにしか世界が存在していないみたいだった。
ここだけ。
全てだ、わたしを守る。

明日も雨にする方法を、私は思いつけない。
仁王くんは明日も愛されている。
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