冬が大嫌いだ。

しゅーっ、と夕暮れから空気が抜けていくような音がして、見上げる。
白っぽい線がちりと尾を引いていく。
空がひゅうと明るくなった。
すぅっと消えて、夕暮れに帰る。
「流れ星?」
「いや、おそらく火球だろう。流れ星にしては明るすぎる。」
「火球。」
「あぁ。」

今日。
まだ好きな人が夢に出てきて2人で学校の中庭を歩いていた。
私はなんだか嬉しくて気まずくて、頑張って少し前のように話しかけている。
彼女の返事に冷たさや倦厭が混じっていないか、いつ彼女に誰がおはようと声をかけるか怖くてたまらない。
ずっと離れたくなくてとっても、とても悲しい夢だった。

「蓮二」
私の言葉が白く消えていくのが怖い。なにもかもこうなる。こうなった。
冬はそれが見える。
愛してるの言葉もその意味も記憶も消えてしまうのが見えるから、もうなにも言えなくなる。
「大丈夫だ。」
そっと私に微笑んだ蓮二は歩みを止めない。
強く生きなきゃいけない。生きなくてもいいのかもしれない。弱くてもいいのかもしれない。でも私には難しいから、きっとできない。
生きるためには強くならなきゃいけないし、強くなるためには生きなきゃいけない。
そう思わなくてはいけない。
とても難しいけれど、寂しさを紛らわすにはそれしかきっと私にはできない。
「まだ世界は終わらない。」
「そうだな。」
蓮二が言うからそうなのだ。まだ。
でも冬に消された言葉だから、嘘にならないかな。
紅茶を飲んで蓮二とキスをした、その後に。
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