いつだって大事な日は雨だ。
彼を愛した日も、あの大会も、今日も。
湿気を含んだ新品のベッドは3人分の重さを乗せてはいるが、3人寝るには狭すぎる。ベッドの使い方すら決めていない。
秋は予想していたよりも早くやってきてしまって、ポトフを食べたくなった。
雨の音がかき混ぜる。3人の人間の静かな呼吸。少し肌寒い室内は後悔と興奮と、懺悔と幸福で満ちていて、皮膚を掻きむしって叫び出してしまいたいような、鼻歌でも歌いながら踊りたいような、そんな気分だった。
これからどうするかなんて、わからない。
宍戸さんの布団をかけ直した。
ついに一歩踏み出してしまったのだ。私たちは。エメラルドの都に続く道へか、ビルの屋上からかはわからないけれど。
宍戸くんがきゅっとシーツを握った。
目の前の寂しさを避けることだけ考えた。
寂しくてたまらなくなるより、人生をめちゃくちゃに壊してしまう方が良いに決まってる。1人になるのは怖い。自分抜きでも彼が生きていける世界を信じたくない。
きっと殺す。
あんたが私を、あなたが俺を。
それは明日かもしれないし、3日後か、半年、何年後かも、今かもしれない。
どちらがどちらをかもわからないけれど。
私たちは似ている。だから今こうしている。だからわかる。俺の世界にあなたはいらないし、あなたの世界に俺はいらない。似たものなんていらない。
俺たちは汚いけれど、愛は美しいのだと誰かが言っていた。
私たちは汚いけれど、宍戸くんは美しい。美しいものを美しいと思う、その気持ちだけが救い。
2人の間で寝息をたてる愛しい彼の頬を撫でた。
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