まだ夏に恋をしているのだろうか。

「俺がテニスやめたらどうする。」
言葉になった白い息は目の前で消えていったのに、ボールの行く先を捉えた瞳はこちらに向いた。
きんと冷えたナイターコート、俺が声に続けたショットが宍戸の半歩先の空気を切り裂いた。
フェンスにぶつかって転がるのをやめたテニスボール。
したことなどない約束を、確かに二人は覚えている。
「お前より強くなる。」
冬の空気は澄みすぎる。
都会に雪は降らない。
「それだけだろ。」
砂糖を零した夜空を飛行機が滑っていく。宍戸のサーブの音からまた始まって、まだ明日の気配はしない。

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