なんて、たいして上手くもない所で使われる。

「ま〜たここかよ。」
「まーたブンちゃん。」
またってお前のために来たんだろぃ、そう言ってガムの包みを差し出す赤髪に、手をひらひらさせた。なんとなく残念そうな顔をしながら、包みを開いて自分に放り込む。
くちゃくちゃ。
音もなく膨らむ緑の薄い膜。空は青い。丸井の白い、パンツの外に出したワイシャツがはたと揺れる。
「いま数学の時間だぜ、テスト近いしヤバくね?」
「あの先生、課題ワーク丸々出すからイケるじゃろ。」
「まー確かに。そういえばさ、」
また薄い球をつくってくちゃくちゃやってから続ける。
「変な噂で持ちきり。お前いつか学校やめんじゃねー?って。あんまサボるからさ。」
ちらりとこちらを見る紫が笑っている。
「さぁの。突然いなくなるかもしれんし、」
キーンコーン、カーン、コーン。
「お、授業終わったな。」
んーっ、気持ちよさそうに伸びをして、今度は大きな膜だ。
ぱちん。
で、なんだっけ。先を促すブンちゃんと、フェンスの外。嘘のようだ。あの夏も、これも。
開けっ放しだった屋上の扉から声がかかった。
「仁王!いるか!」
「うげ、真田だ。部活には早くねぇ?」
不満の形に歪めた口でまた緑色を膨らます。
「今日は丸井の四十九日だからな。早く行くぞ。」
まだ衣替えから日はそんなに経っていないが、マフラーを巻いた寒がりの幸村も階段登って来て俺に向かって手を振った。
手を振り返しながら、ひとりきりの屋上で呟く。
「高校も大学も一緒かも。」

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