カフェテリアの時給が良かった。
彼といると私が不幸の人間に思えてくる。
最初はそれだけで良かった。まだ良かった。なんでもかんでも幸運のせい、運命のせい。
彼は特別だから。
私とは原材料が違うのだ。
「わかっちゃったの。だから、耐えられない。」
そうじゃない。
そうじゃなかった。
彼にはあった、努力と実力、幸運に裏付けられた謙虚さと優しさが。自分の血の滲むような努力、他人には真似のできない彼の生まれ持った気質でさえ、日々の幸運に紛れさせてしまう。誰にも気づかれぬように誰にも驕らず誰にも誇示せず。
彼の幸運は、偶然なんかじゃない。
必然だったのだ。そう、幸運を持つべくして生まれた運命。
彼に運命がなければ私は彼を普通に愛すことができたろうか。
彼に運命がなければ私以外の誰かにずっと愛されていただろうか。
「好きな人とさいごまで、一緒で、」
嫌だ。聞きたくない。
「ラッキーだなぁ」
愛情と嫉妬を振り下ろした。
それきり。
生あたたかい液体は彼の笑顔を塗っていき、もう何もなかった。
私は負けたのだ。
世界中の全てに、なんの懺悔も歓喜も救いもなく。
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