運が良い人だ。彼といれば出先での雨だってバツグンのタイミングで止んだし、スーパーの福引きだって一度も白い玉が出たことない。
『それからほら、毎年引いたおみくじも絶対に大吉だったでしょ?』
奇跡のような出来事も、彼はラッキーの一言で片付けてしまう。
『ねぇ、まだ怒ってる?』
だから、千石清純が居眠り運転のトラックにはねられて死んだなんて嘘に決まっているのだ。交通量の多い道でたまたま彼だけに追突するトラックなんてありっこない。全然ラッキーじゃない。
『うーん、今回のラッキーはアンラッキーだったんだよ。ね?』
私は信じない。彼は運が良い人だ。アンラッキーなんてつまらないにも程がある冗談ではないか。
『でもまぁ、最後こうやって幽霊になって君と会話できたのは、ラッキーだったね』
両腕を頭の後ろで組んだ千石清純がだんだん霞んでいき、救急車の音が煩い。
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